結果が全てだった経営者。受講後もしんどさは消えないが、その正体を言葉にしてメンバーに渡せるようになった

経営者

プロフィール
柏村沙希さん

株式会社josanshi 代表取締役 社長・助産師。助産師向けの教育、キャリア支援、メディア、マーケット支援などを展開し、助産師の新たな価値と働き方を社会に広げることを目指している。助産師として9年働き、4年目のときに起業。会社は3期を終えて4期目に入った。

一生に数度の出産という現場に立ち会う助産師の仕事は、常に黒子であれと教えられる職業です。感情を抑えることを求められ続けるうちに、柏村沙希さんは自分が何を感じているのかが分からなくなっていったといいます。さらに「結果がなければ愛されない」という幼い頃からの意識が、経営者になってから一層強くなりました。経営者の本を読み込んで理想像を積み上げれば積み上げるほど、本当の自分から遠ざかっていったそうです。REBOOST、セルフコア、THE VISIONを経た今も、しんどさは消えていません。ただ、何がしんどいのかも分からなかった頃とは違い、今はなぜしんどいのかが分かるといいます。何が起きたのかを語っていただきました。

黒子であれと教わり、100点でなければ愛されないと思ってきた

まず、どんな職業観の中で働いてこられたんですか?

助産師として9年ほど働いてきました。フルタイムで働いたのは6年ほどです。助産師4年目にはもう起業していたので、後半は夜勤だけを続けながら並行していた形になります。今は助産師向けの教育やキャリア支援、メディア、マーケット支援などを手がける会社を経営しています。

あくまで出産する方が主役で、私たちは黒子である。助産師はそう教えられる職業です。患者さんより先に泣かない。患者さんが感情を出せるように立ち回る。新人の頃から繰り返し言われてきました。

一生に1回か2回しかない出産で、その方自身が主役になれるようにする。それは大事なことだと今も思っています。ただ、感情を抑えることを繰り返すうちに、自分が本当は何をしたいのか、何を楽しい、嬉しい、悲しいと感じるのかが、あまりにも抑え込まれすぎている感覚がありました。

私だけではありません。たくさんの助産師さんと話す中で、感情を抑え込む傾向は他の専門職より強いと感じていました。

結果を何より重視する考え方は、いつ頃からあったんでしょうか?

小さい頃からです。とにかく100点。プロセスはどうでもいい。両親も医療職だったので、結果が何よりも重要という価値観の中で育ちました。医療の現場は、どんな状況でも安全に終えることが最優先ですから。

100点を取ると、誰よりも喜んでくれる人がいました。父です。成績が良かったり、いい高校に入ったりすると、近所の人に私のことを自慢してくれるんです。それが本当に嬉しかった。当時、父のことは好きではありませんでした。それなのに認められたいという気持ちだけは、ずっとありました。

結果がなければ愛されない。結果がなければ価値がない。そこまで言葉にできていたわけではありませんが、全ての土台がそこにありました。

あるべき経営者像をつくるほど、本当の自分から遠ざかった

経営者になってから、ご自身の中でどんな変化がありましたか?

医療の世界から出てきた人間なので、自分はビジネスサイドではない、という劣等感がありました。大きな目標を口にすると、その市場では無理だよと言われることもありました。

だから経営者の本をたくさん読みました。経営者はこうあるべきだ、こうするべきだ。自分の中に経営者像をいくつも積み上げていったんです。当時の私にとっては、それが唯一の解決策でした。

ところが、あるべき姿を積み上げれば積み上げるほど、本当の自分との乖離を感じるようになっていきました。ふとした瞬間に、自分が何をしたいのか分からなくなる。受講前の1年ほどは、楽しかったはずなのに辛くなっているという感覚が、強く出ていました。

一番はっきり表れたのは、スタッフが退職するときです。経営者の自分が悲しいのか怒っているのか、本当の自分が悲しいのか怒っているのかが、分からない。

そのズレは、会社にはどう表れていたんでしょうか?

社員から、今ってどういう目線で喋っていますか、と聞かれるようになりました。会社を主語にして話しているのか、個人としてそうしたいから言っているのか。ありがたい指摘だったと思います。

そして私の歪みは、そのまま会社のカルチャーになっていました。メンバーも結果が全てだと口にするようになっていたんです。元々はそうじゃなかったはずでした。存在をしっかり認めてほしいという欲求が、みんなにもあったはずなんです。

なぜ結果が大事なのか。そこを飛ばして、結果だけを言葉にして渡していました。起業から3年が経つ頃、その違和感を一番感じていたのはメンバーです。私も分からない、辛い。みんなも辛くなり始めている。

社内という閉じた場にいるかぎり、自分はなかなか解放されない。客観視が必要だと感じていました。でも、これはもう自分ではできないという感覚でした。

斜に構えて座っていた私が、本当は言いたかったと気づくまで

REBOOSTを受けようと思ったきっかけは何だったんですか?

理由は2つありました。1つは事業のためです。私たちは助産師さんがもっと力を発揮できるようにしたい、新しい価値を生みたいと思っているのですが、ご本人の中に自分を抑え込む何かがあると、なかなか進めません。それをどうにかできないか、ヒントを学びたかった。

もう1つは、自分自身のことです。経営者の自分と本当の自分の乖離を、どうにか打破するきっかけが欲しかった。逃げと言われれば、そうかもしれません。すがるような思いもあったと思います。

実はREBOOSTの前に、組織コーチングの1日プログラムに参加していました。そのときに担当してくださったコーチから、セルフコアまでは絶対に行った方がいい、と言われていたんです。そう感じさせる何かが、私から出てしまっていたんでしょうね。

実際に参加してみて、最初はどんな感じでしたか?

正直に言うと、初日の午後まではずっと斜に構えていました。これはどういうものなんだろう、と入り込めない。みんなが声を出す場面でも、こんなことをしないといけないんだろうかと、冷静にとらえている自分がいました。

終わったときには、どんな変化がありましたか?

結論から言うと、本当の自分とは何かというところに、少し触れられた感覚で終わりました。3つのプログラムを受けましたが、楽になったという実感が一番大きかったのは、私の場合はREBOOSTだったと思います。

気づいたのは、本当の私はみんなに愛を届けたいし、伝えたいこともたくさんある、ということでした。それなのに、口に出すと負けた感じがする。そんな謎の勝ち負けの価値観があって、自分から大事にしているよ、好きだよと言わないようにしていたんです。

でも、本当は言いたかった。自分の思い込みに気づけたことは、その後の日常での気づきの積み上げに、大きく効いてきました。

結果がなければ愛されない。ずっと持っていたものに、名前がついた

そのあと受けたセルフコアは、どんな体験でしたか?

REBOOSTで同じチームだった全員を誘って、同じ日程のセルフコアに行きました。まだ見つけられていない自分の何かがある。そう思っていたので、迷いはありませんでした。

REBOOSTが自分との向き合い方を知る時間だったとすれば、セルフコアはとにかく人と向き合うことの価値と、その難しさを痛感した時間でした。

私のチームには、事前の課題に着手できていない人が5人中2人いました。1人でも欠けたら意味がないと分かっていたので、そのメンバーにどう関わり、どう伝えるかが、とても難しかったです。

ご自身の中で、何が一番大きかったですか?

自分自身に「許可出し」ができたことです。頑張らなくていい。愛していい。愛されていい。

私がずっと持っていたのは、結果がなければ愛されない、結果がなければ価値がない、結果が全て、という思い込みでした。結果を出し続けないと気が済まない。典型的な努力中毒だと、自分でも思っていました。一番苦しかったのは、間違いなくそれだったと思います。

そこで初めて、しんどさの正体に名前がつきました。それまでは、何がしんどいのかも分からないまま走っていたんです。苦しいことは分かっている。でも何が苦しいのかは分からない。それが、なぜしんどいのかが分かる状態に変わりました。

それは、いつからあったものだったんでしょう?

家庭環境もあったと思います。ただ、より強固になったのは起業してからの3年でした。勤めているうちは、会社の中で頑張ればよかったんです。でも起業すると、終わりのない戦いに出てしまう。

もう1つ、気づかされたことがあります。結果だけを求めて、あとは見ない。なぜそれが大事なのかを飛ばして、結果だけを言葉にする。それが会社のカルチャーを作ってしまっていた、ということです。

これは気づけたというより、気づかされたという表現のほうが合っています。言われて、初めて分かりました。

経営者の私と、個人の私。分けなくていいと分かった

そのあとTHE VISIONにも進まれたんですね。

会社をどういう風に持っていくのか。将来的に売却するのかどうか。今後の展開をどうするのか。大きな意思決定が、ちょうど降りかかってくる時期でした。セルフコアで終わりにするのは気持ち悪いなと思っていたので、迷いは全くありませんでした。

受けてみて、どう変わりましたか?

これから自分がどこへ向かうのかが、かなり明確になりました。

今までは、経営者としての自分と、個人としての自分を分けて考えてきたんです。でもそこで描いたものは、個人の私のほうでした。しかもそこには、しっかり会社のことも入っていました。ちゃんとビジネスを追って、出生数を上げたいという、自社を超えた大きな絵も描いていたんです。

私はこれがしたかったんだ。これでよかったんだ。そういう安心感と、自信になりました。

迷わなくなりましたし、描いた未来には合わないかもしれないけれど、今の状況だからこれを選んでいるんだ、という切り分けもできるようになりました。

周りの方との関係にも変化はありましたか?

しんどさを言葉にできるようになったので、なぜ社長がしんどくなっているのかを、メンバーに共有できるようになりました。今こういう状態で、生まれ変わる途中なんだと伝えられると、みんなも安心してくれます。全員とまではいきませんが、少しずつ話せるようになってきたかなと思います。

以前は、外の方との商談は得意なのに、社内ミーティングのほうが何十倍も緊張していました。社外なら主語が株式会社josanshiで、この会社のことは大好きだし、良いものを作っている自負もある。でも社内になると、矛先が私自身に向いてくるんです。その緊張も、少しずつほどけてきています。

今も逃げたい。でも、これは必要なしんどさだ

今のご自身は、どんな状態ですか?

正直に言うと、今もしんどいです。ただ、しんどさの種類が違います。

これまで私が好きだったしんどさは、やることが明確で、積み上げていけば終わりが見えているものでした。それは全く苦ではないんです。今味わっているのは、そうではない自分と向き合うしんどさ。全然好きじゃありません。

頭では分かっているんです。自分がオープンになったり、枠を超えたりすれば、みんなも私も幸せになるということが。でも、その場になるとできないんです。そのことを話しているだけで、泣けてきてしまうくらいに。

それでも続けようと思えるのはなぜですか?

自分の描いた未来が、たとえば南の島で過ごすようなものだったら、もういいやと思ったかもしれません。でも私は、人の役に立つビジネスをやり、社会課題にちゃんと貢献していきたいと心から願っています。そのために、私が変わることが必要なんです。逃げたいけれど、逃げたらそこへはたどり着けない。

だから、これはいらないしんどさなんじゃないか、とは迷いません。これは「必要なしんどさ」です。

最後に、受けようか迷っている方へ伝えたいことはありますか?

早く行った方がいい、という言葉はすごく浅いなと思っています。受けたい。受けないとだめだ。そう本能的に思える時が、きっと来るんじゃないかなと思うんです。

そう思えた瞬間の行動は、ちゃんと素直に取ったほうがいいです。そのときの自分の状態や姿勢によって、得られるものが全然違うので。とりあえず行っておくか、という状態では、一生に1回しか経験できない価値がもったいない。

必要なものは、素直な心だけだと思います。


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